腰痛と人間は長い付き合い
「腰痛とは神様が2足歩行と引き換えに人間に課した試練である」
上の文言は中世ヨーロッパの書物の中に記されていたと学生時代に教わりました。腰痛と人間の付き合いは今に始まったことではなく、数千年も前から人間を苦しめてきたということが良く分かる1文です。人間とこのように長いお付き合いの腰痛とはいったいどんなものなのでしょうか？原因は何なのか、放置するとどのようなことが起こるのかについてお話していきます。
腰痛とは
腰痛とは書いて字のごとく「腰の痛み」ですが、なぜこの場所に痛みが出やすいのかお話していこうと思います。
腰という字は「月」へんに「要」と書きますが、体に関する漢字の部首のほとんどが「月（にくづき）」がつきますので「月（身体）の要＝体の中心」という意味になります。腰は身体の中心で上半身と下半身をつなぎ、それぞれの動きを制御したり、動いていない時は姿勢を維持したりと常に働いています。また、猫背や太ももやお尻の筋肉の緊張に影響を受けやすいなど休まることがありません。「風邪をひいて数日間寝込んでいたらギックリ腰になった」というお話もよく聞きます。寝ていても腰は休むことが出来ないのですね。
また構造上の問題もあります。腰椎は5つの椎骨で構成されていますが、それを複数の筋肉のみで支えています。例えて言うならテントを支えるタープです。動いていても、座っている時でも腰椎という柱を制御するために常に緊張して動作や姿勢維持を行ってくれています。
このように腰は休むことなく仕事をしてくれていますし周囲から色々な影響を受けています。人類の80％が腰痛の経験があったり、悩まされているのはこのような理由があるからなのです。
こんな症状はありませんか？
腰痛と一口に言っても様々な原因があります。ここでは腰痛を引き起こす主な疾患をその症状の特徴と共にお話していきます。
変形性腰椎症
加齢性の腰椎の変性で50代以上の方の全ての方に起こりうる疾患です。重労働やスポーツをされる男性に重症化するケースが多く、以降に出てくる疾患の元になります。
症状の特徴は起床時の痛みで、日中は気にならないことが殆どですが、変形が進行すると痛みを感じている時間が徐々に長くなっていきます。
脊椎分離症
中高生の部活動などを行っている比較的若年層にもみられる疾患です。繰り返される腰椎への刺激により腰椎の一部に骨折様の分離が起き、これが痛みの原因となります。起床時は無症状の事が多く、運動中後に痛みが強くなり、休息によって痛みが軽減するのが特徴です。
椎間板ヘルニア
椎間板とは腰椎一つ一つの間にあるゼリー状の物質で、中心に髄核というビー玉上の物質がある事で腰椎は色々な方向に動くことが出来ます。ヘルニアとはこの髄核が周りのゼリー状の物質を破り外に飛び出し付近にある神経を圧迫する事で発症します。腰の痛みというよりは足のシビレから始まる事が多い疾患です。中高年層に多く発症しますが、スポーツをする20台前後の若年層にも起こる疾患です。
脊柱管狭窄症
脊柱管とは背骨の中の脊髄が通る管のことで、ヘルニアや後縦靭帯骨化症などの色々な疾患が原因で起こります。中高年層に多く、この場合は上記の変形性腰椎症が原因で起きる脊椎すべり症によるものが殆どです。症状の特徴は間欠性跛行といってある一定距離歩くと下肢に痛み出し休息すると痛みが消える。でもまた歩き出すと・・・を繰り返し、狭窄が進行すると歩行できる距離が徐々に短くなっていきます。
骨粗鬆症
60代以上の女性に起き、年齢を経るごとに多くなります。症状の特徴は夕方から夜にかけての痛みで、夕飯の支度をしていると腰痛が起き立っているのが段々辛くなり座りたくなると言います。この症状は骨密度が低下している方に顕著に表れるため内科等での内服薬での治療も必要となります。
代表的な5つの疾患をご紹介しましたが、高齢者になればなるほど複数の疾患が併発している（変形性腰椎症と骨粗鬆症、変形性腰椎症と脊柱管狭窄症など）ことが多くなります。また症状に悩まされている期間が長いほど回復までにより多くの時間を要します。
症状の進行、悪化を感じたらお早めに当院にご相談ください。
